“沈黙の臓器”と呼ばれる腎臓。
慢性腎臓病の患者はなんと成人の8人に1人。
糖尿病の患者数よりも多く、1330万人いるとも言われています。
健康診断の結果では、血圧や血糖値、中性脂肪だけではなく、腎臓の機能が正常かどうかを示すクレアチニン値やタンパク尿をチェックしましょう。
eGFR(推算糸球体濾過量)として記載されていることもあります。
これらの数値が悪いと指摘されても、とくに気になる自覚症状がないからと、再検査を受けない人が多くいます。
目次
1.腎機能、なぜ大切?
1-1.腎機能は一度悪くなると元に戻らない
腎臓は肝臓とともに“沈黙の臓器”と呼ばれ、腎機能が悪化するまで自覚症状がほとんど現れず、気づいたときには手遅れ…なんてこともしばしば。
腎機能が低下し、慢性腎臓病(CKD)と診断されるといずれ「人工透析」か「腎移植」をせざるを得なくなります。
しかも、腎機能は低下するとその機能を回復させることは難しく、一度悪くなると元に戻らないのです。
つまり、できるだけ腎臓が元気なうちに、腎機能を維持する努力を始める必要があるのです。
腎機能は加齢とともに少しずつ低下するものですが、糖尿病や高血圧、脂質異常症高尿酸血症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や、運動不足、喫煙、ストレス、飲酒などは腎機能を低下加速させます。
30代、40代で糖尿病や高血圧、血尿などを指摘された経験がある人は、50代で人工透析に至るケースも少なくありません。
1-2.腎臓病のタイプは2つ
腎臓病はこれといった自覚症状が現れない「無症状タイプ」と、むくみや尿の異常、高血圧などの「急性症状タイプ」があります。
腎機能が低下すると体内の水分量の調整がうまくいかなくなるので、尿量が増えます。
しかし、腎臓への血流が悪くなると反対に尿量が減ります。
そのため、腎機能の低下に気づいたときにはすでにかなり進行している場合もあるのです。
1-3.GFRが44以下だと要注意
慢性腎臓病(CKD)は血中のクレアチニン値から算出されるGFR(糸球体濾過量)と、腎機能の低下を示すタンパク尿が一定以上みられるかによって、診断されます。
健康診断の結果からクレアチニン値がわかる人は調べてみましょう。
このGFRの数値によって慢性腎臓病はステージG1~G5まで6段階あります。
とくにGFRが44以下の場合は慢性腎不全や心血管疾患のリスクが格段に上がるので、腎機能の低下の進行を食い止めるにはこの段階までに対策を始める必要があります。
1-4.タブーと言われていた運動で腎機能を守る
慢性腎臓病の治療には、食事療法や薬物治療に加え、生活習慣の見直しと改善が必要です。
しかし、運動については、運動することによってタンパク尿が増加したり、腎機能が低下するからと「安静第一」が基本条件でタブーとされてきました。
ところが、その後の研究で運動によってタンパク尿が増えるのは一過性のものだとわかり、適度に運動を続けたほうが長期的にみて腎機能の維持につながり、心血管疾患のリスクを抑えられることがわかったのです。
また、透析治療の開始後であっても、運動をすることで透析効率がよくなり、衰えていた体力や筋力が戻るケースもあるようです。
2.まとめ
腎機能を守るためには、ウォーキングなどの有酸素運動と、筋肉に抵抗をかけるレジスタンス運動が必要です。
ウォーキングは15~20分/kmほどの速さで歩くとよいでしょう。
レジスタンス運動は、現状の運動能力をチェックしたうえで、低下している能力を補います。
強度が強すぎると心臓に負担がかかり、弱すぎると効果が得られないため、適切な運動強度が大切です。
ご自身の腎機能の重症度ステージや体調と向き合いながら、無理せずに行いましょう。
いつまでも元気に、不自由なく生活できる体を手に入れたいのであれば、自分の腎臓としっかり向き合いましょう。