現代日本人の約2800万人が発症している「腰痛」のうち、2~3%が「椎間板ヘルニア」だと言われています。
目次
1.高反発の寝具はいいのか
高反発の寝具は、適度に身体を押し上げてくれるので首痛や腰痛の人にはお勧めです。
ただし、硬過ぎる寝具は考えものです。
床に薄い布団を敷いて寝るなど、いわゆる”せんべい布団”のように硬過ぎても首や腰に負担をかけてしまいます。
寝たときに身体がまったく沈まないと、仰向けに寝て足を伸ばしたときに大腰筋が引っ張られた状態になり腰が緊張するため、かえって腰椎が圧迫されて痛みが出てしまいます。
もう一つ大切なポイントとなるのが「枕」です。
枕は寝返りを前提に選ぶことが重要です。
横向き寝になることを想定し、「肩の高さ」に合わせるのがよいでしょう。
枕は長く使っているとペチャンコになってしまうため、肩より低くなってきたときが買い替えの時期です。
その際、枕の大きさにも気を配り、最低でも自分の肩幅くらいはあるものを選びましょう。
睡眠のように同じ姿勢で長時間いることは、首や腰に負担をかけます。
日本人の睡眠時間の平均は約7時間ですから、その間はほとんど身体を動かさずにいることになります。
デスクワークなら途中でトイレに立ったり、1時間ごとに身体を動かすストレッチをしたりもできますが、寝ているときには自分でコントロールできません。
そう考えると睡眠時間は、必ずしも首や腰にとっては優しい時間とは言い難いものがあります。
皆さんは寝るとき、どのような姿勢を取っているでしょうか?
恐らく多くの人は、まっすぐに上を向いて寝る”仰向け寝”をしていると思います。
しかし、身体の構造からすると、仰向け寝は正しい寝方ではないのです。
脊椎動物で上を向いて寝ているのは人間だけ。
仰向けになって寝ているワンちゃんやネコちゃんを私は見たことがありません。
特に首痛や腰痛がある場合、仰向けで寝るのはリスクが高いといえます。
それでは逆に”うつぶせ寝”が良いのかというと、これも首や腰が反り返るので首痛や腰痛を起こしやすい最悪の寝方になります。
一説によると、内臓が弱い人は無意識に身体を守ろうとして、うつぶせ寝になっているといわれています。
ですから、寝るときには股関節と膝を曲げ、やや腰を曲げてエビのようなポーズの〝横向き寝〞をお勧めしています。
これが、背骨全体のためには一番ラクな寝方といえます。
横向きになると背骨が曲線を描くようになるので、首や腰の骨が本来のカーブを取り戻しやすくなります。
つまり、一つひとつの骨の間隔が開くので、首や腰にとってリラックスしやすい状態になります。
また、すでに首や腰が痛い場合でも、骨と骨の間隔が開けば神経の圧迫も緩むので、痛みを感じにくくなります。
ただし、痛むほうを上にすると、骨と骨の間隔が狭まり、さらに強く神経に触れる恐れがあるので注意が必要です。
2.横向き寝は睡眠時無呼吸症候群の予防にもなる
このほか、横向き寝は舌の落下が起きにくいので睡眠時無呼吸症候群の予防になりますし、妊娠中の女性に適した寝姿勢です。
消化器系の不調を抱えている人の場合は右半身を下にすると腸の働きを助けることができ、貧血体質の場合は心臓がある左半身を下にすると全身の血液が心臓に戻りやすいともいわれています。
もちろん、寝ている間も寝返りを打つなど動いているものですから、「横向きで寝たはずなのに、朝起きるといつも仰向けになっている」ということがあるでしょう。
その場合は、気にする必要はありません。
眠りにつき、寝返りを打ち始めるまでの間、背骨に負担の少ない横向き寝をすれば十分です。
気になるという人は、「抱き枕」を使うのも一つの方法です。
横向き寝で問題になるのが、腕の位置です。
身体の下に腕をもっていくと血行が悪くなりますし、前にもってくるのが自然ですが、何か落ち着かないもの。
そのせいで、横向きの姿勢が取りにくいという人が多いのです。
そういう人は、抱き枕を試してみてください。
自然に姿勢が正しくなるだけでなく、寝つきが良くなる人もいるのでお勧めです。
3.腰痛予防のための「コルセット」装着は危険
さて、私たちは床に置いてある荷物を持ち上げるとき、身体を安定させるために腰回りの筋肉を使ってお腹に力を入れ、自然と腹圧を高めています。
このように身体には本来、腹圧を自然に高めることができる機能が備わっています。
しかし、椎間板ヘルニアなどで痛みがあると、腹圧を高めることができなくなります。
そこで、筋肉の代わりとなるコルセットを装着し、身体を安定させているのです。これが、先に述べたように筋力が自然のコルセットの役割を果たしているということです。
しかし、腰痛を予防する目的で、痛くもないのにコルセットに頼って装着していると、筋肉は衰えてしまうため、自力で身体を安定させることができなくなります。
もちろん、腰に痛みが出ている場合は、骨盤ベルトやコルセットは有効な器具といえますし、コルセットを外せば負荷がかかり、椎間板ヘルニアの場合は髄核が再び飛び出てきます。
ただし、ヘルニアの原因が取り除かれたわけではないので、表面の症状を和らげたに過ぎません。