ストレスを受けると、自律神経の交感神経が刺激されます。
その結果、血管が収縮して血圧が高くなり、心臓の筋肉の収縮力が強まり、負担が大きくなるのです。
大きく呼吸をすれば、副交感神経が働きます。
すると血管が広がって血圧が低くなり、心臓の筋肉も楽ができます。
目次
1.両手を上げてあくびをするだけ
しっかりと睡眠を取り、よく笑ってあくび体操をすることは、血圧を安定させて心臓への負担を減らすために、非常に効果的です。
あくび体操は、両手をゆっくりと高く上げ、胸いっぱいに空気を吸い、あくびをするときのように「あ~あ」と声を出して、両手を左右に下ろす体操です。
あくび体操では両手を高く上げます。
このとき、頭が自然に持ち上がり背すじが伸びるので、肺に空気を多く取り込めて深く呼吸をすることができます。
また、声を出すことで、あくびと同じリラックス効果を得られ、血圧が安定するのです。
あくび体操はいつ、何セット行ってもかまいません。
「疲れたな」「ストレスがたまってきた」と感じたときには、ぜひあくび体操を行ってください。
注意が必要なのは、食事中にむせやすい人です。
食後すぐにあくび体操を行うと、せき込んだり苦しくなったりする可能性があるので、時間を空けてから行うようにしましょう。
2.あくび体操のやり方
好きなときに何回行ってもよいが、毎日行う。特に、ストレスを感じたときに行うのがお勧め※むせやすい人は、食後に行うのは避ける
❶手足は肩幅に開き、背すじを伸ばして胸を開く。
❷両手をゆっくりと高く上げながら、深く息を吸い込む。
❸「あ~あ」とあくびをして、両手をゆっくり下ろす(声だけでもよい)。
3.心臓肥大が小さくなった例も
あくび体操の考案したのは、小笠原内科の小笠原先生です。
ストレスが体に与える影響を研究していた中、ストレスから解放されてリラックスする方法を考えるようになったそうです。
このような経緯で、あくびの効果に思い至り、あくび体操を考案。1991年から実践に至りました。
それからは、患者さんや講演会のお客さんに、あくび体操を教えてきたのですが、周りの医師が驚いた事例をご紹介します。
当時75歳だったAさん(男性)は重症の心不全で、心臓が胸の82%を占めるほど大きくなっていました。
正常は45%以下ですから、Aさんは重度の心臓肥大で、通常だと長くは生きられない状態だったのです。
Aさんは入退院をくり返していたため、奥さんは疲れ果てていました。
そこで、人生の残りの時間を自宅でいっしょに過ごすため、私が往診することになりました。
往診の際、入院中は禁止されていたみそ汁を飲みたいとAさんは話していました。
そこで、「飲んでいいですよ。ただし、必ずあくび体操をしてください」と私は伝えました。
「心不全の患者さんにみそ汁を許可するなんて」と驚かれるかもしれませんが、私がそうした理由は三つあります。
❶自宅で過ごすことで、リラックスできている
病院は安心できる場所のようで、実は病気と闘うためのストレス空間でもあります。
入院中、緊張していた患者さんは、住み慣れた自宅に戻ってきただけでリラックスします。
それによって、緊張で過度に収縮していた血管が拡張し、心臓の負担が減っている状態なのです。
❷我慢はストレスの原因
病気になれば、「塩分摂取はダメ」「お酒はダメ」などと我慢を強いられることが増えます。
これは大きなストレスになり、血管を収縮させる原因になります。
Aさんの場合、これ以上、我慢をさせる必要はないと判断しました。
❸血管拡張療法として、あくび体操を取り入れる
ストレスを受けると、意志とは無関係に体をコントロールする自律神経の交感神経が刺激されます。
その結果、血管が収縮して血圧が高くなり、心臓の筋肉の収縮力が強まり、負担が大きくなるのです。
このような状態のときに、あくび体操で大きく呼吸をすれば、副交感神経が働きます。
すると血管が広がって血圧が低くなり、心臓の筋肉も楽ができます。
自宅で過ごすようになってからは、Aさんの心臓肥大は改善していきました。
心臓の大きさは3年後に54%に、10年後には49%まで小さくなっていたのです。
Aさんの胸部レントゲン写真を見せると、多くの医師がびっくりします。
あくび体操が起こした奇跡であると同時に、住み慣れた我が家で過ごすことの重要性を認識させてくれた事例でした。
4.寝たままでも座ったままでも行える
寝たきりの人は布団の中で、立ち上がるのが困難な人は座ったままあくび体操を行っても、効果があるのです。
軽症の高血圧の人や健康に問題のない人でも、あくび体操は血圧改善をはじめ、さまざまな健康効果が期待できると考えています。
ですから、重症でなくとも高血圧に悩んでいる人は、ぜひあくび体操を試してみてください。
あくび体操の魅力は、お金がかからないうえ、やったあとに自然と表情が緩むこと。
せっかくの人生ですから、あくび体操で皆さんも笑顔で長生きしてください。